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Japanische Klassiker mit Furigana

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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

Lesen Sie 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.100 Zeichen · 523 Bildschirme

Aozora Bunko

人違いではないかと、いく度も心を落ちつけて見直したが、やはり自分の錯覚ではない。時雨堂の虚無僧である。一節切の主である。今も手にはその尺八を持っているのが紛れのない印だ。

「どうしてあの人が、今頃こんな所にいるのかしら……」お綱は不思議に感じたが、尺八を携えているのから見るに、この打出ヶ浜へそぞろ歩きに出て、自分と同じように、雨宿りをしているのだろうと推量した。

しかし、それにしてはあまり夜が更けすぎている。自分はお十夜の眼から遁れるため、わざとこの松原に姿を隠し、もし矢走へ出る渡船があったら、草津あたりで宿をとろうと考えている間に、今夜の大嵐に逢って退ッ引きならなくなったのだけれど、あのお方はなんだって、今頃こんな淋しい所にぽつねんとしているのかしら? と、法月弦之丞の悩みを知らぬお綱には妙に思えた。だが何よりも、こうして意外な人に逢えた機縁の欣しさに、胸の裡はいッぱいだった。

何とかして、声をかけてみたい、かけられてみたい、と心はわくわく燥ぎ立つが、どういってよいものやら、いって悪いものやら、黙然としている人は、いつまでもつれなく機会をつかませてくれない。