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Japanische Klassiker mit Furigana

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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

Lesen Sie 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.100 Zeichen · 523 Bildschirme

Aozora Bunko

はかない頼みがぷッつり切れて、お綱はハッと悲しくなりながら、

「あっ、もし……」

われを忘れて呼んでしまった。そこにたたずむ女のあることを、あらかじめ知っていたので、弦之丞は別に意外なさまもなく、松を隔てたすぐ前に足をとめて、

「なんでございますか」

静かに、にべもない返辞でふりかえった。

「あの……」お綱の唇は、いつにも似ずワナワナふるえて、われからいうべくあまりに舌がもつれがちである。

「あの、もしやあなたは……」といいかけてから、しどろになって後の言葉を探したように、

「もしや今日の日暮方、あの時雨堂で、一節切を吹いておいでになったお方ではありませんか」

いぶかしげに、女を見つめていた弦之丞は、月に隈どられた顔をニッコとさせて、

「ようご存じ……。気まぐれな手すさびゆえ、人に聞かすべきものではござりませぬ」

「いえいえ、ほんによい音色、関の山で聞いておりますと、骨身に沁みるようでございました」

「お身も尺八がお好きとみえるの」

「深く聞くことは存じませぬが、ただわけもなく好きなのでございます」お綱は自分でも気がつかない間に少し流暢になりながら、「殊にあなたの宗長流を立慶河岸で初めて聞いた晩から、もう妙に心をひきずられて……あれから後も、どんなに音色をお慕い申していたかしれませぬ」