Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.100 Zeichen · 523 Bildschirme
「急げ、急げ」
「峠を越えると郷の口」
「郷の口には休み場もある」
「何しろ支度をかえなければやりきれない」
「明け方から急に疲れを覚えてきた」
「兵糧がほしい」
「もう一息、もう一息!」
「道も河内へ入れば平坦になる。大阪表まで六、七里とはないぞ」
一行はへトヘトに疲れていた。
先に立って励ますのは天堂一角、九鬼弥助、森啓之助。
二挺の駕を列に挟んで、以下二十人ほどの侍がつづいてゆく。難路へかかるたびに出る愚痴は、夜を徹してこの悪路を、関の裏街道から休みもなしに押してきた汗と喘ぎの悲鳴である。
縄括りにした二挺の山駕、それをかついでいるのも侍だ。時折、肩を代え、肩を代えして、螺旋状にうねッた道を峠の頂まで登ってきたが、
「あっ、また血がこぼれる……」
ドカンと、一挺の駕尻を下ろしてしまった。
その駕の裾から、おびただしい血汐が滴りだしている。みる間に、それは幾すじもの赤い線となって、生ける蚯蚓のように、土の上を横縦に流れだした。
「こう血をだしては死ぬであろう」
「だめだ。死ぬぞ、こいつは」
下ろした駕を取りまいてガヤガヤしだした。
「この分では、所詮、大阪までは保っていまい」