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Japanische Klassiker mit Furigana

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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

Lesen Sie 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.100 Zeichen · 523 Bildschirme

Aozora Bunko

それはたびたびいうてあるではないか。おう! この弦之丞の心も察してくれい」

「では、どうありましても?」

「……身に骨肉がないならば――父や母や兄弟や、そして家門や徳川家の直参などという家統がないならば……」

「わ、わかりました」いうかと思うと銀五郎、ガバと前へうっ伏した。いつの間にか、弦之丞が側においた刀を忍ばせていたらしい。びっくりして抱き起こしてみると、切ッ尖深く自分の手で脇腹を抉っていた。

こんこんと流れでる鮮血が、自分の膝へも温く浸み徹ってくるのを感じながら、弦之丞はなにもいわずに、ただひしと銀五郎を抱きしめた。

唐草は断末の朱に悶え苦しんだ。が、彼には、ふたたび起てない自覚があった。多市が最期をとげたこと、一八郎が捕えられたこと、すべての破綻とともに、自分の終るのも当然だとは知っている。

恨むらくは、ついに、阿波の土を一足もふまないこと――そして法月弦之丞をついに動かすことができなかったこの二つ。

この二つの恨事は、彼が白骨となるまでも、永劫に抱く心残りであらねばならぬ。

急に、抱えている腕へ重みがかかった。ガクリとこときれた様子。

石のようになって、睫毛に泪をさえ溜めていた弦之丞。