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Japanische Klassiker mit Furigana

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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

Lesen Sie 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.100 Zeichen · 523 Bildschirme

Aozora Bunko

「どうしても私には、阿波へ渡る気になれませぬ」

「あの鳴門の渦の海、越えぬ者は怖ろしがる。だが、恋もそれに同じこと、渡ってみれば苦もないのじゃ。ましてや千石積のお関船、渦に巻かるるおそれもなし、楽しい彼岸は一夜のうちに迎えてくれる」

「そんな訳ではなく、どうしても」

「な、何ッ」ふるえを帯びた啓之助の声。

「いやだというのか!」お米の耳をつんざいた。

「…………」

「うーむ、ではとくからの量見であろう。なぜ、いやとあらば早くから、きッぱりといいきらぬッ!」

「お察しなされて下さいませ……素気ないことをいいきれぬ、弱い客商売の娘でございます」

「だまれッ。客商売じゃと申すいいわけは、つまり、いろは茶屋の売女同様に、この啓之助を手玉に取ったという意味かッ! よしッ、拙者もお船手の森啓之助、腕にかけてもつれてゆく。オオ、きッと阿波へつれてまいるぞ」

「あ、ご無態な……」

「逃してなろうか。宅助、宅助ッ、手を貸せい!」

帛を裂くような悲鳴が流れた。

風が出た――いつかドップリと深い宵闇。

大川の三角洲、四貫島、うす寒い川風が、蕭々と芦を鳴らしてやまぬ。

鬢を吹かせて走りだしたのは森啓之助。