Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.100 Zeichen · 523 Bildschirme
ふいと側の女中へ眼をつけた。
十六、七の愛くるしい小間使、ハッとして手を袖の裏へ隠したが、帯の前から懐剣の袋の紐! タラリと解けて下がっている。
「天満浪人の廻し者ッ!」
咄嗟にうしろへ寄るや否、阿波守重喜の片足が、ポンと女の帯を蹴った。
「あッ! ……」と優しく魂切った声――と一緒に、蹴落された少女の姿は落花微塵、隠し持っていた懐剣をほうり投げて、一八郎の側へ仆れるとともにワッと泣き崩れた。
声を揃えて朋輩の女たち、
「オッ、お鈴殿!」と意外に衝たれて眼をみはる。
鳩の密使を飛ばして、常に俵同心の手へ、屋敷の内事を洩らしていたのはこのお鈴。
「泣くな! うろたえ者めがッ」
一八郎は激越な声で叱りつけた。そして思わず側へ仆れた妹を、抱き寄せようとしたけれど、両手の自由はきかないのである。
「ああ、すべてこうなる世であるのだ、泣くな、妹よ! よいか、兄の側で死ねるを嬉しいと思うがよいぞ」苦しい声を唇で噛みしめた。
ところへ、一人の近侍が、森啓之助の来たことを告げた。阿波守は、一八郎を血祭りにすると称して、思う壺に女中の中から諜者を見出した満足ににっことして、