Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.100 Zeichen · 523 Bildschirme
のみならず俵同心、近頃ではこの鳩を、わが分身のごとく操り、腹心の人、常木鴻山の所へ文使いさせたり、万吉を呼びにやったり、妹の所へ飛ばせたりする。
妹はお鈴という美人、身元を隠して、かなり前から、安治川岸の蜂須賀阿波守、その下屋敷へ住み込んでいる。何の手段か、何の便りを頻々と交わしているのか、いつも密書の使者が鳩だけに、誰あって気がつく者はないのである。
「旦那様、お鈴様から御返事が……」と今も召使の東助爺が、柄の小さな家鳩を拳にのせて、縁の端から一八郎の書屋を覗いた。
「うむ、来たか……」待ちわびていたらしい一八郎はすぐ小鳩の足の蝶結びを解いて、庭の巣箱へパッと放し、机の前に戻って、その雁皮紙の皺をのばした。
「東助……」読み終って嬉しそうに、
「いよいよ、阿波守が帰国の時、お鈴も供に加えられて、徳島城の奥勤めに移りそうじゃ」
「おお、それはよいご都合でござります。したが、そうなりますと使いの鳩も、あの鳴門の海を越えて行き来せねばなりませぬな」
「自信がある。あれくらいな距離は何でもない。どうじゃ爺、これほど自在に鳩を使う者も、またここに着眼した者も、一八郎をおいて余人にはあるまいが」