Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.100 Zeichen · 523 Bildschirme
お綱がさような心得違いをしておるなら、なぜとくと意見をしてやらぬ。ただの旅やいたずらごとではないぞ、他領者禁制の関をくぐって忍びこむ命がけの探索。女づれの同行がなるか成らぬか、つもってみても知れたことじゃ」
「…………」万吉は、一言もなかった。俺はまったく、お綱の心を買いすぎている、と自分でもはっきり気づいている彼であった。
そのくせ、お綱の今の真向きな気持――それはやっぱり事情のゆるすかぎり、容れてやりたい気がするのだ。けれど、弦之丞へ恋していることだけは、万吉には、どうも話しにくくって、ついそのまま、おくびにも出さずにいる……。
だから弦之丞には、お綱が、天王寺で紙入れを掏った罪を深く悔悟している心もわかり、また、その悪い渡世の境界から、生れ代ろうとしている悩みも分っているが、より以上、どこまでも、自分について――しかも阿波へ渡る秘密の旅先まで、つきまとおうとする心のほどが解せないのである。
恋の力! ときけば、彼にも一語でうなずけよう。その代り、今の如き真剣味でいる弦之丞は、キッと、お綱を悲嘆の底に落すだろう。
あの、不愍なお千絵を忘れて、お綱の恋をうけいれるような弦之丞でないことは、万吉にも、あまりに分りすぎている。