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Japanische Klassiker mit Furigana

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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

Lesen Sie 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.100 Zeichen · 523 Bildschirme

Aozora Bunko

その袖門、門柱から二、三尺離れた所に、いわゆる目安箱というものがかかっていた。

これは、八代将軍吉宗の時代から設けられた一つの制度で、百姓、町人、僧侶、神官、誰でもかまわぬ、何か治政上についての得失利害、役人の奸曲、奉行の圧政など、上申したいことがあったら、書面にしたためて箱の中へ投げ入れておくことをゆるされたもの。

開錠日は、月三回、七の日と決まっている。お錠番は評定所付きの御小人目付、その日の正午に箱ごとピンとはずして、柳営の奥坊主へ届ける、奥坊主はすぐこれを本丸の小姓頭の部屋にもちこみ、そこで御用取次の役人がついて、将軍家休息の間の中央にすえておく。この間は何人でも、その箱の中の書類に指をふれることは無論、覗くこともゆるされない。

その目安箱の側へよって、万吉は、ふところから弦之丞のしたためた密封をさぐり出し、生唾をのみながら、箱の口へ、ポンと入れた。

「さて、このあとの御沙汰が、吉とくるか、凶とくるか。……この書付一本が、天満組の俺たちや、甲賀家のお千絵様、また弦之丞様たちが、一生涯浮沈の分れ目……」

自分の手で入れた書類が、箱の底へゴソリと落ちこんだ音に、かれは一種の昂奮と動悸をおぼえて、そこに茫となっていた。