Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

Lesen Sie 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.100 Zeichen · 523 Bildschirme

Aozora Bunko

「けッ、ふざけやがるな」

鷲のごとく飛びついたが、お綱の体に触れない前に、あっ! と雲助が音を揚げた。と思うと、何者にか、二人とも襟がみを引っつかまれてブーンと一ふりふりまわされる。

「街道のウジ虫め、悪くあがくと命がねえぞ」

「アッ、ごめんなすって――」

下からその太腕を見あげると、服は黒麻に茶柄の大小をさし、夏ではあるが、黒紗の頭巾に半顔をつつんで、苦み走った浪人の伝法肌。

お綱は、ひょいと振りかえって、

「おや、お前は、お十夜じゃないか」と、二足三足戻ってくる。と孫兵衛は、両手にしめつけていた雲助を、ドンと向うへ突っ放した。

「あ、お待ちよ、駕屋さん――」

ほうほうの態で逃げかける雲助を、駕屋さんと優しく皮肉に呼びとめたお綱。

「街道すじは生馬の目を抜く人通り、他人様のふところを狙う前に、よく自分たちの胴巻でも用心していたほうがいいよ」

ニッコリ笑うと、いつの間に掏っていたのか汗じみた雲助の財布をポーンと足もとへほうってやった。

「こんなビタ銭は、痛々しいから返してあげる。だがネ、これから正直に働かないときかないよ」

「あっ、こいつア俺のだ」あっ気にとられた雲助は、それを拾うとお十夜の眼も怖く、一散に空駕をさらって逃げてしまう。