Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.100 Zeichen · 523 Bildschirme
娘はかすれがすれにいう。
「そう、じゃあ、人には話せない訳なんだね」
「すみません、ご親切を無にしまして……」
「それでは、あまり深く訊かないことにしましょうね。誰にしたところで人にいえない胸の裡はあるものだし、ましてやこんな場合に、根掘り葉掘りされることは辛いでしょう。けれどもねえ、お前さん、私だって若い身だけれど、お互に咲くや咲かずの花のうちに、森の死神なんかに取ッつかれちゃつまりませんよ。え、お分りかえ」
「あ、ありがとうございます」
「分ったら、無理な注文だろうけれど、カラリッと気を晴れさせて、早くお家へお帰りなさいね……え、よござんすか」
優しい手を、ソロリと肩へ廻し、髪を根くずれさせてうっ伏している娘の顔をさし覗いた。と、お綱はその時はじめてびっくりした。
川長で見たことのあるお米なのだ。
ハッと思って、妙な疑惑につつまれていると、その矢先に、陰森とした空気を破って、後ろで不意な人声がする。
「旦那! お米さんはここにいましたぜ。ここにいますよ、ここに!」
「えッ、いたか!」バラバラと木の間から、四、五人の者が集まってきた。追分の宿の大津絵師、室井半斎とその召使たち。