Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おうがいのおもいで

鴎外の思い出

小金井 喜美子

Lesen Sie 鴎外の思い出 (おうがいのおもいで) von 小金井 喜美子 (こがねいきみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 127.675 Zeichen · 254 Bildschirme

Aozora Bunko

梅林の奥に掘井戸があります。向島は湿地で、一体に井戸が浅いのですが、それでも水はよいのでした。お父様はお茶がお好きなので、水のよいというのをお喜びです。その井戸に被さるようになった百日紅の大木があるのが私には珍しくて、曲った幹のつるつるしたのを撫でて見ました。庭と井戸との境には低い竹の垣根があって、見馴れない蔓がからんでいますのを、「これは何でしょう」と聞きましたら、お父様は、「それは美男葛といってね。夏は青白い花が咲くのだ。もう莟があるだろう。実が熟すると南天のように赤くて綺麗だよ。蔓の皮を剥いで水に浸すと、粘が出るのを髪に附けるのだとさ。それで美男葛というのだろう」とおっしゃいました。

柿の木もあり、枇杷もあり、裏には小さな稲荷様の祠もありました。竹の格子から外を見ているのと違って、ここでは勝手に遊ばれるので、学校の少し遠くなった位何でもないと思いました。お国を出てから今日まで我慢をしていらっしゃったのですから、お父様はお家の時はいつもお庭でした。

賑やかな花の頃に、運動場からその花を見上げるばかりで、土手へはそんなに上りません。それでも風が吹くと、運動場は落花で真白になります。