Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おうがいのおもいで

鴎外の思い出

小金井 喜美子

Lesen Sie 鴎外の思い出 (おうがいのおもいで) von 小金井 喜美子 (こがねいきみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 127.675 Zeichen · 254 Bildschirme

Aozora Bunko

そんなものはないといっても聞きません。それはあなたが知らないのです。年寄がそういいます。遠方からわざわざ来たのですから、先生のお帰りを待って戴いて行くというのです。田舎の人は実に強情で困ります」と、さも不平らしくつぶやきます。

「まあそう一概にいわないで、気の済むようにして上げたいものですね」とお母様のおっしゃるのに、傍からお祖母様が、「それは『ろくじん散』をいうのではないかえ」といわれます。

「ほんとにそうかも知れません。聞いて見ましょう」と、その人に逢って聞きますと、やはりそうなのでした。

「よく聞伝えて来て下さいました。お年寄のおっしゃるのは御尤もです、お国にいた時には随分出たお薬ですから。」

書生さんはそっちのけです。まだ座敷の隅にある百味箪笥――今は薬ばかりでなく、いろいろの品の入れてあるその箪笥から、古い袋を取出して、もう薬研にかけて調合はしてあるのですから、ただ量だけを計って、幾包かを渡しますと、「さぞ年寄が喜びましょう」と、にこにこして帰りました。

後で聞きましたら、それは何代目かの人の発明で、鹿の頭の黒焼を基にしたのだそうです。胃腸の薬で、持薬にするとのことでした。