Japanische Klassiker mit Furigana
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おうがいのおもいで
鴎外の思い出
小金井 喜美子
Lesen Sie 鴎外の思い出 (おうがいのおもいで) von 小金井 喜美子 (こがねいきみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 127.675 Zeichen · 254 Bildschirme
一藩中どこの家にも備えてあって、家伝の妙薬といわれ、あまりに需要が多いので、幾ら山国でもなかなか原料が間に合いません。山蔭に竈を据えて、炭を焼くようにして、始終見廻るのでした。頼んだ人夫に心懸けのよくないのがあって、そっと牛の頭を混ぜて持って来て、そのためにひどく面倒になったことがあるそうです。今もチャーコールなどというのがありますから、きっと効き目があったのでしょう。
車小屋が出来る時、板が間に合わないので、少しの間葭簀を引いて置きましたが、やがてそれを捲いたのが、片隅に寄せてありました。茶の間の前の軒に雀が巣をかけて、一日幾度となく、親雀が餌を運びます。早く夕御飯をしまった私は、少しの米粒を小皿に取って、右の葭簀の一本を抜いて来て、その先に附けて巣のある辺へ出しましたら、すぐに銜えて這入りました。それが面白いので、毎日極まって遣りますと、時刻が来ると親雀の方で、軒先にいて私を待つようになりました。それが幾日も続きました。
或日軒端にけたたましい音がするので、何事かと思って見上げましたら、親雀が気が狂ったかのように羽ばたきして、くるくる廻ります。