Japanische Klassiker mit Furigana
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おうがいのおもいで
鴎外の思い出
小金井 喜美子
Lesen Sie 鴎外の思い出 (おうがいのおもいで) von 小金井 喜美子 (こがねいきみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 127.675 Zeichen · 254 Bildschirme
ですから寒中には、霜が荷の上に光るのです。前を引くのは皆屈強な若者たちですが、後押しは若い女たちがします。一人ならず二人でもします。ちょいちょい坂もありますから後押も必要なのでしょうし、また毎日土にまみれて働く人々には、町中へ出るというのが楽しみでもあるらしく、女たちは皆小ざっぱりした支度で、足拵えも厳重に、新しい手拭を被り、赤い襷をかけて、ほの暗い道を、車を押して来るのでした。
私の家は北組といって、千住一丁目の奥深いところでしたけれど、まだあたりの白まない内から、通を行く車の音や人声が聞えます。五丁目から一丁目にかけては、市場へ行く重な道ですから、当然でもありましょう。北組をすぎて中組にかかると、市場も程近いというので、後押の人の中には引返して帰るのもあります。家にはまたそれぞれの仕事があるのでしょう。
あちらこちらから集った農夫と、買出しに来た商人たちとで、市場は一杯になります。声高に物をいい交し、あちこちと行違い、それはひどい混雑です。毎朝その市場の人込を分けて、肋骨の附いた軍服の胸を張って、兄は車でお役所へ通われます。混雑の中を行くために、幾分か時間のゆとりを見て置かねばなりません。