Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おうがいのおもいで

鴎外の思い出

小金井 喜美子

Lesen Sie 鴎外の思い出 (おうがいのおもいで) von 小金井 喜美子 (こがねいきみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 127.675 Zeichen · 254 Bildschirme

Aozora Bunko

風呂敷包を斜に背負い、その頃よく来た托鉢僧のような饅頭笠を深々と冠り、手縫いの草履袋を提げた私の姿は、よほど妙であったらしく、兄たちは菌のお化だとか、狸のお使いだとかいって笑いました。

その笠に画いた墨絵は兄の筆でした。兄はよく四君子を画いたり、庭を写生したりしたので、童子が牛に乗って笛を吹いている絵を殊によく画きました。それがかわいいので、よくねだって貰ったものでした。明治四十四年に寺内陸軍大臣が引退せられる時、部内の高等官一同の贈物に、牛に乗った童子の銀製を選んだのは兄でした。

父は口数の少い方で、患者に対しても余計なことは申しませんが、親切なので、その人がらを好む患者がつぎつぎと知人を紹介して、だんだん病家は殖えるのでした。その頃向島にも医師会が出来て、おりおり寄合があり、扱った珍しい患者とか、その変った容態などを代る代る話合うことになりましたが、父はそれを非常に苦にして、「実に困ってしまう。己は皆も知っている通り口下手だからなあ」といいます。

その時母は申しました。「それでは林に相談してみましょう。何とかよい考えがあるかもしれません。」

その頃兄は、土曜日ごとに家へ帰って来るのでした。