Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おうがいのおもいで

鴎外の思い出

小金井 喜美子

Lesen Sie 鴎外の思い出 (おうがいのおもいで) von 小金井 喜美子 (こがねいきみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 127.675 Zeichen · 254 Bildschirme

Aozora Bunko

それがいつともなく快方に向い、知人の誰より長命したのですが、ただ一切あたりに心を使わず、体の動く間は研究室に通って、自分の思うことだけを心任せにしていたのがよかったのでしょう。家族の者も、主人に心配させるようなことは一切しませんでした。晩年は、世にある方たちには思いも寄らぬ少額の恩給だけでの生活でしたが、家内中の誰も、それを不足だとは思いもしませんかった。いわば主人は心が平かだったので、それが保健上何よりの条件と思います。あの何事にも忍耐強かった兄が、身体の衰弱のためもありましょうが、晩年には時々甲高い声も出されたと聞いた時には、身も縮むように思いました。

けれども今になって、詰まらぬことは申しますまい。割合に短命だった一生に、兄はあれだけの仕事をせられたので、それが永久に残るのだと思えば、この上の満足はありますまい。本人も地下で微笑していられるでしょう。謹んで兄の冥福を祈りましょう。

ながらへてまたかゝるもの書けるよと

笑みます兄のおもかげ浮ぶ

命ありて思ひいだすは父と母

わが背わが兄ことさらに兄

ゆきまして三十とせあまりいつもいつも

忘るゝ間なく君をこそおもへ