Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おうがいのおもいで

鴎外の思い出

小金井 喜美子

Lesen Sie 鴎外の思い出 (おうがいのおもいで) von 小金井 喜美子 (こがねいきみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 127.675 Zeichen · 254 Bildschirme

Aozora Bunko

梅の盛りの頃には、花の間から藁屋根の見えるのがよい風情でした。軒には太い丸竹の樋が掛けてありましたが、それも表側だけで、裏手にはありません。その際に高い五葉の松が聳えていました。私はその太い幹を剥いでは、剥げた皮が何かの形に見えるといって喜んで、それを繰返して遊びました。暫くすると、その葉色が悪くなり、弱りが見えて来ました。裏手ですから目立ちませんが、どうしたものかと案じました。父は、これは誰かのいたずららしいと、頻りに調べていられました。錐か何かで穴を明けて、鰹節などを差込んで置くと、そこから虫が附き始めるというのです。原因は知らず、木はやがて枯れてしまいました。

五葉の松の近くに裏木戸があって、そこに柳が糸を垂れています。表門の際のほどには大きくありませんが、風が吹くと横ざまに靡いて、あたりの木を撫でるのでした。木戸を出るとすぐ田圃です。曳舟通が向うに見えます。或年長雨で水が出て、隣の鯉屋の池が溢れ、小さな鯉や金魚が流れ出たといって、近所の子供たちが大勢寄って来て、騒立てたことなどもありました。

正面の庭の奥の、縁からは見えぬあたりに柿の木がありました。