Japanische Klassiker mit Furigana
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おうがいのおもいで
鴎外の思い出
小金井 喜美子
Lesen Sie 鴎外の思い出 (おうがいのおもいで) von 小金井 喜美子 (こがねいきみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 127.675 Zeichen · 254 Bildschirme
色は濃い茶色をしていて、それがなかなか堅くて溶けませんから、子供には長く楽しまれるのでしょう。或時よその年寄が来て、立話をして帰るのを、母が送って出ましたら、門の際の生垣に挿してあった飴の棒を抜いて、しゃぶりながら行ったので呆れたといわれましたが、そんなに堅いのです。
家の中は押入が多くて、よく片附いていました。床の間は一間で、壁は根岸というのです。掛軸は山水などの目立たぬもので、国から持って来たのですから幾らもありません。前には青磁の香炉が据えてあり、隅には払子が下っていました。
兄が家にいられる時の机の上には、インキ壺、筆、硯、画筆に筆洗などがあり、壁際には古い桐の本箱が重ねてありました。折れ曲った所のれんじ窓から、裏庭を越して田圃が見渡されます。遥か先に五代目菊五郎の別荘があるとか聞きました。
冬の夜風が強く吹いて、土の底までも凍りそうな折には、狐が出て遊ぶといわれます。畦をつたって走りながら鳴くので、それで声がとぎれとぎれだというのでした。そんな晩は、蒲団を頭から被って、小さくなって睡ります。夏の夜は蛍が飛びかいますが、誰も気に止めません。