Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おうがいのおもいで

鴎外の思い出

小金井 喜美子

Lesen Sie 鴎外の思い出 (おうがいのおもいで) von 小金井 喜美子 (こがねいきみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 127.675 Zeichen · 254 Bildschirme

Aozora Bunko

よい白蝋を煮とかして、壺ようの器に入れてあり、それに「単膏」という札が貼ってありました。その単膏に、さまざまの薬を煉込むのですが、その篦が今のナイフのような形をしていて、反りの利く、しっかりしたものでした、何に使うのか、水銀を煉込むのを面白く思いました。銀色の玉が転り出るのを上手に扱うのです。過ったら大変です。そこら一面に銀色の小粒が拡がるのですから。

或年の大雪の降った翌朝のことでした。雨戸は開いたのに、私は少し風邪の気味だといって床にいましたが、横目で見上げると、樋のない藁葺屋根の軒から、大小長短幾つもの垂氷の下っているのが、射し初めた日に輝いて、それはそれは綺麗です。「あれが欲しい」といいましたが、「あんな物をどうするの。もう起きなさい」と、誰もかまってくれません。やがて御飯になりました。渋々起きてお膳に向っても、目は軒端を離れません。その時、「おい、これを遣ろう」と、後に声がします。振返ると兄が、大きなコップに垂氷の幾本かを入れたのを、笑いながら出されます。「まあ、どこからお取りになりましたの。ありがとう」と、すっかり上機嫌になりました。