Japanische Klassiker mit Furigana
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わし
鷲
岡本 綺堂
Lesen Sie 鷲 (わし) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 144.476 Zeichen · 290 Bildschirme
お妻が草履をはいて出ると、それと入れ代りに、老婆が文次郎と駕籠屋に扶けられて乗った。お妻を歩かせる以上、駕籠を早めるわけにもいかないので、鮫洲の宿に着いた頃には、その日もまったく暮れ果てていた。
「ありがとうございました。お蔭さまで大助かりをいたしました。」
駕籠を出た老婆は繰返して礼を述べて、近江屋の一行に別れて行った。年寄りをいたわってやって、よい功徳をしたようにお峰親子は思った。しかもそれは束の間で、老婆と入れ代って駕籠に乗ったお妻は忽ちに叫んだ。
「あれ、忘れ物をして……。」
老婆は大事の物という風呂敷包みを置き忘れて行ったのである。文次郎も駕籠屋らもあわてて見まわしたが、かれの姿はもうそこらあたりに見いだされなかった。当てもなしにお婆さんお婆さんと呼んでみたが、どこからも返事の声は聞かれなかった。
「あれほど大事そうに言っていながら、年寄りのくせにそそっかしいな。」
口叱言を言いながら、文次郎は駕籠屋の提灯を借りて、その風呂敷をあけてみた。一種の好奇心もまじって、お妻も覗いた。お峰も垂簾をあげた。
「あっ。」
驚きと恐れと一つにしたような異様の叫び声が、人々の口を衝いて出た。