Japanische Klassiker mit Furigana
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まど
鷹野つぎ――人と文学
鷹野 つぎ
Lesen Sie 鷹野つぎ――人と文学 (まど) von 鷹野 つぎ (たかのつぎ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 21.840 Zeichen · 43 Bildschirme
その通りすぎて行く近くに南窓で見て知っていた病院の裏門もある筈であった。
私はこれほど再び世間の物音に近づいた現在が、ふしぎにも思われた。寝台車でここに運ばれ再び見ることもないかもしれぬと思った街路の近くに、また私は来ていた。むしろ私よりも軽いと云われた病児が、先立ったことにも月日に潜む測りえぬ恫喝が迫っていたことが思われた。
私は新らしい自分のベッドにかえり、感謝に満ちて身を安めた。不幸中の幸福がどんなに深いものであるかを、回復に向う私の心身は噛み占めた。過ぎ去った多くの苦悩や、現在の心配ごともこういう時には、晴れた空の片隅に吹き寄せられた淡い雲の塊りのようであった。
初めての日の夜が来ると、私の窓に添うた廊下を往来する足音も絶え、前後に隣る病室の物音も静まって、私の隣りの空ベッドのあたりが余計闃として来た、私はキリギリス籠を思わせるベッド蚊帳におさまって、それでも病躯にちがいないまだ異和のある身を、眠りのなかに忘れて行った。
数日過ぎてからもう夕方に近いころ私の隣りに、肥満した可愛らしい娘が入室した。それと共に私の名札とならんで、坂上とよ子の名札が、入口の扉の上に掲げられた。