Japanische Klassiker mit Furigana
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きりん
麒麟
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 麒麟 (きりん) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.040 Zeichen · 18 Bildschirme
それは鹿の裘に索の帯をしめた老人が、畦路に遺穂を拾いながら、唄って居るのであった。
「由や、お前にはあの歌がどう聞える。」
と、孔子は子路を顧みて訊ねた。
「あの老人の歌からは、先生の歌のような哀れな響が聞えません。大空を飛ぶ小鳥のような、恣な声で唄うて居ります。」
「さもあろう。彼こそ古の老子の門弟じゃ。林類と云うて、もはや百歳になるであろうが、あの通り春が来れば畦に出て、何年となく歌を唄うては穂を拾うて居る。誰か彼処へ行って話をして見るがよい。」
こう云われて、弟子の一人の子貢は、畑の畔へ走って行って老人を迎え、尋ねて云うには、
「先生は、そうして歌を唄うては、遺穂を拾っていらっしゃるが、何も悔いる所はありませぬか。」
しかし、老人は振り向きもせず、餘念もなく遺穂を拾いながら、一歩一歩に歌を唄って止まなかった。子貢が猶も其の跡を追うて声をかけると、漸く老人は唄うことをやめて、子貢の姿をつく/″\と眺めた後、
「わしに何の悔があろう。」
と云った。
「先生は幼い時に行を勤めず、長じて時を競わず、老いて妻子もなく、漸く死期が近づいて居るのに、何を楽しみに穂を拾っては、歌を唄うておいでなさる。