Japanische Klassiker mit Furigana
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てらだとらひこ
黄道
和辻 哲郎
Lesen Sie 黄道 (てらだとらひこ) von 和辻 哲郎 (わつじてつろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.971 Zeichen · 59 Bildschirme
、そこが焼けるだろうとは少しも考えなかった。五時ごろ郊外へ帰ったとき、頭にあるものは大火ではなくてただ地震の被害であった。
いったいに日本橋あたりのあの大建築物が焼けるだろうということは、無数の火の手を見ていたその土地の人々さえもが考えなかった様子である。三越では四時ごろに焼けないと確信して店員を帰したという。日本橋詰めの店々では、その夜三越に火がついたときくまでは逃げようともしていなかった。丸善の店員は六時ごろに同じく焼けないと確信して店を出たが、十時ごろには焼けた。店を出て郊外へ帰った人々はいいが、その土地に住む人たちは、焼けないと信じつつ火の手の来るのを待って、いよいよ逃げ出すときには荷物を積んだ車の雑踏のために、あるいは煙に巻かれて死に、あるいは持ち出した荷物を捨てて命からがら逃げるというふうな目にさえ逢ったのである。幸い丸の内まで逃げのびたS氏の話をきくと、荷物の車をひいて魚河岸の三、四町の間を通るのに、一時間以上もかかったという。自分の親戚のMが語るところによれば、銀座附近も同様であったらしい。最も近い火事は日比谷で、火事場との間には掘り割がある。