Japanische Klassiker mit Furigana
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くろいとう
黒い塔
小川 未明
Lesen Sie 黒い塔 (くろいとう) von 小川 未明 (おがわみめい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 3.802 Zeichen · 8 Bildschirme
二
二
毎日こうして、姉はへやのうちに閉じこもってさびしく日を送りました。母や、妹は、音楽会や、船遊びなどに出かけられるのを、自分だけは、ただこの窓から、遠くの空しかながめることができなかったのです。どんなに海のながめは美しかろう。どんなに花の咲いている野原のながめは美しかろうと思っても、不具の身は出かけることもできませんでした。やがて、その日も暮れかかりました。姉は、独り窓から街の方をながめていました。そのうち塔の頂に目が止まると、またしても、その塔が自分を手招ぎするような気がしたのであります。
「あの塔の上に登ったら、きっと海が見えるにちがいない。」と、そのとき姉は思いました。そう思うと、しきりにいってみたくなりました。
明くる日、姉は、だれにも知れないように、苦心をして城からのがれ出ました。そして、町の人々に女皇の姫であるということを気づかれないようにして、塔の立っているところまでやってきました。
塔の周囲は荒れ果てていました。草が茫々としてしげっていました。幾十年このかた、だれも、この塔に上ったものがありません。町の人々は、この塔を幽霊塔と名づけていました。