Japanische Klassiker mit Furigana
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くろいてちょう
黒い手帳
久生 十蘭
Lesen Sie 黒い手帳 (くろいてちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.026 Zeichen · 38 Bildschirme
そのうちに、こんなに苦しむならたとえ餓死をしてもよそうといいだしました。そこへあの急変でしょう。このまま死なせると、あたしたちの思いで殺したようになるので死に身に看護してとうとうなおしてしまいました」
亭主はこれから白耳義のスパ(温泉場)へ行って自分のシステムでルウレットをやって見ること。大勝する気なぞない。毎日細く食べて行けるだけ勝てば満足であること。「もしいけなかったらそのときは夫婦心中をするんです」といって細君のほうへ振返った。細君は夫の手の上に手をのせた。それが同意のしるしでもあるように。
次の夕方、夫婦は白耳義へ発っていった。タクシーの窓の中で手を振りながら。
一、五日ほどのち六階へ上ってゆくと、彼はたぐまったような恰好で寝台で横になっていた。非常に痩せ細り、顔などは、びっくりするほど小さくなっていた。自分が入って行くのをもどかしそうにながめながら、癇癪をおこしたような声でいった。「おい、おれはこうやって三日も貴様を待っていたんだぞ……おれは動けなくなったんだ。手も足も萎えてしまって、身動きひとつ出来やしないんだ」どうしたのかとたずねると、彼は忌々しそうに唇をひきゆがめながら、「なあに自殺するつもりでいろんなものを出鱈目に飲んでやったんだ。