Japanische Klassiker mit Furigana
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くろねこ
黒猫
島木 健作
Lesen Sie 黒猫 (くろねこ) von 島木 健作 (しまきけんさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.717 Zeichen · 14 Bildschirme
病気が少しよくなり、寝ながら本を読むことができるようになった時、最初に手にしたものは旅行記であった。以前から旅行記は好きだったが、好きなわりにはどれほども読んでいなかった。人と話し合って見ても旅行記は案外読まれていず、少くともある種の随筆などとはくらべものにはならぬようであった。自分にとって生涯関係のありそうにもない土地の紀行など興味もなし、読んで見たところで全然知らぬ土地が生き生きと感ぜられるような筆は稀だし、あるなつかしさから曾遊の地に関したものを読むが、それはまたこっちが知っているだけにアラが眼につく、そういうのが共通の意見であるようだった。私自身も紀行の類を書きながら、こういうものを一体誰が読むだろう、そう思って自信を失ったおぼえがある。それが今度長く寝ついて、誰よりも熱心な旅行記の読者は病人にちがいないということを信ずるようになった。
私は間宮倫宗を読み松浦武四郎を読み、菅江真澄を読んだ。ゲーテを読み、シーボルトを読み、スウェン・ヘディンを読んだ。明治以後の文人のものは誰彼を問わず、家にあるものを散読した。そうして幾らもないそれらの本が尽きてしまうと、地理学の雑誌を枕もとにならべさせた。