Japanische Klassiker mit Furigana
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くろねことみ
黒猫十三
大倉 燁子
Lesen Sie 黒猫十三 (くろねことみ) von 大倉 燁子 (おおくらてるこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.366 Zeichen · 29 Bildschirme
アパートの階段を馳け上り、自分の部屋に飛び込んで見ると驚いた。ベッドに寝ていたはずの重傷人は煙のように消え去っている。が、夢でない証拠には、真紅の花を撒き散らしたように、シーツの上に血の跡が点々と残っていた。
驚いたのはそればかりではない。室内は勿論、戸棚から本箱から悉く引掻き廻され、抽斗という抽斗は全部開け放しになっている。書類はあっちこっちに飛び散り、床の上に転がされてあるインキ壺からは、黒いインキが毒々しく流れ出して、床を汚している。本庄が出かけた後に何者かが忍び入り、家探しをした上に、少女を浚って去ったに違いない、それにしてもこの部屋の荒しようはどうだろう。足の踏み場もない。奮然として棒立ちになっているのを見て、友人は嘲笑を唇に浮べて云った。
「怖しく散らかしたもんだな。――して、その危篤の女はどこに秘してあるんだね?」
彼はむッとして、ぶッきら棒に答えた。
「畜生! ご覧の通り逃げちゃった!」
「一体これやどうしたッてんだ? 泥棒が入ったんじゃないか? 金があるもんだから。――」
「金なんかあるもんか」と云ったが、今日は月給日だった。ふだんなら机の抽斗に入れておくのだが、運よく持って出掛けたので助かった。