Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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くろゆり

黒百合

泉 鏡花

Lesen Sie 黒百合 (くろゆり) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 78.148 Zeichen · 154 Bildschirme

Aozora Bunko

「それじゃあ滝さん、もう、ここから帰っておくれ、ちょうど人目にもかからないで済んだ。」

早朝町はずれへ来て、お兼は神通川に架した神通橋の袂で立停ったのである。雲のごときは前途の山、煙のようなは、市中の最高処にあって、ここにも見らるる城址の森である。名にし負う神通二百八間の橋を、真中頃から吹断って、隣国の方へ山道をかけて深々と包んだ朝靄は、高く揚って旭を遮り、低く垂れて水を隠した。色も一様の東雲に、流の音はただどうどうと、足許に沈んで響く。

お兼は立去りあえず頭を垂れたが、つと擬宝珠のついた、一抱に余る古びた橋の欄干に目をつけて、嫣然として、振返って、

「ちょいと滝さん、見せるものがある。ね、この欄干を御覧、種々な四角いものだの、丸いものだの、削った爪の跡だの、朱だの、墨だので印がつけてあるだろう、どうだい、これを記念に置いて行こうか。」

四十一

折から白髪天窓に菅の小笠、腰の曲ったのが、蚊細い渋茶けた足に草鞋を穿き、豊島茣蓙をくるくると巻いて斜に背負い、竹の杖を両手に二本突いて、頤を突出して気ばかり前へ立つ、婆の旅客が通った。七十にもなって、跣足で西京の本願寺へ詣でるのが、この辺りの信者に多いので、これは飛騨の山中あたりから出て来たのが、富山に一泊して、朝がけに、これから加州を指して行くのである