Japanische Klassiker mit Furigana
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くろゆり
黒百合
泉 鏡花
Lesen Sie 黒百合 (くろゆり) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 78.148 Zeichen · 154 Bildschirme
次第に消えて、このあたりでは路とともに尽きて見えなくなる処に来た。
もとより後は見も返らず、少年はお雪を抱いたまま、ひだを蹈み、角に縋って蝙蝠の攀ずるがごとく、ひらりひらりと巌の頂に上った。この巌の頂は、渠を載せて且つ歩を巡らさしむるに余あるものである。
時に少年の姿は、高く頭上の風に鷲を漾わせ、天を頂いて突立ったが、何とかしけむ、足蹈をして、
「滝だ! 滝だ!」と言って喜びの色は面に溢れた。ただ聞く、どうどうと水の音、巌もゆらぐ響である。
少年はいと忙しく瞳を動かして、下りるべき路を求めたが、衝と端に臨んで、俯向いて見る見る失望の色を顕した。思わず嘆息をして口惜しそうに、
「どこまで祟るんだな、獣め。」
五十八
少年を載せた巌は枝に留まった梟のようで、その天窓大きく、尻ッこけになって幾千仭とも弁えぬ谷の上へ、蔽い被さって斜に出ている。裾を蹈んで頭を叩けば、ただこの一座山のごとき大奇巌は月界に飛ばんず形。繁れる雑種の喬木は、梢を揃えて件の巌の裾を包んで、滝は音ばかり森の中に聞えるのであった。頂なる少年は、これを俯し瞰して、雲の桟橋のなきに失望した。