Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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くろゆり

黒百合

泉 鏡花

Lesen Sie 黒百合 (くろゆり) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 78.148 Zeichen · 154 Bildschirme

Aozora Bunko

真先に覚えて来る、喧嘩の対手は泣かせて帰る。ある時も裏町の人数八九名に取占められて路地内へ遁げ込むのを、容赦なく追詰めると、滝は廂を足場にある長屋の屋根へ這上って、瓦を捲くって投出した。やんちゃんもここに至っては棄置かれず、言付け口をするも大人げないと、始終蔭言ばかり言っていた女房達、耐りかねて、ちと滝太郎を窘なめるようにと、夜に入ってから帰る母親に告げた事がある。

しかるに、近所では美しいと、しおらしいで評判の誉物だった母親が、毫もこれを真とはしない。ただそうですか済みませんとばかり、人前では当らず障らずに挨拶をして、滝や、滝やと不断の通り優しい声。

それもその筈、滝は他に向って乱暴狼藉を極め、憚らず乳虎の威を揮うにもかかわらず、母親の前では大な声でものも言わず、灯頃辻の方に母親の姿が見えると、駆出して行って迎えて帰る。それからは畳を歩行く跫音もしない位、以前の俤の偲ばるる鏡台の引出の隅に残った猿屋の小楊枝の尖で字をついて、膝も崩さず母親の前に畏って、二年級のおさらいをするのが聞える。あれだから母親は本当にしないのだと、隣近所では切歯をしてもどかしがった。