Japanische Klassiker mit Furigana
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くろゆり
黒百合
泉 鏡花
Lesen Sie 黒百合 (くろゆり) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 78.148 Zeichen · 154 Bildschirme
立派なもんだ。どうして、お前さんのその不思議な左の目の瞳子に見覚がなかった日にゃあ、名告られたって本当に出来るもんじゃあない、その替り、こら、こんなに、」
と手を取って、お兼は掌に据えて瞻りながら、
「節もなくなって細うなったし、体も弱々しくって、夜露に打たれても毒そうではないか。」
「不景気なことを言ってらあ。麦畠の中へ引くりかえって、青天井で寝た処で、天窓が一つ重くなるようなんじゃあないよ、鍛えてあらあな。」と昂然たり。
「そうかい、体はそれで可いとした処で、お前さんのような御身分じゃあ、鎖を下ろした御門もあろうし、お次にはお茶坊主、宿直の武士というのが控えてる位なもんじゃあないか。よくこうやって夜一夜出歩かれるねえ。」
「何、そりゃおいら整然と旨くやってるから、大概内の奴あ、今時分は御寝なっていらっしゃると思ってるんだ。何から何まで邸の事をすっかり取締ってるなあ、守山てって、おいらを連れて来た爺さんだがね、難かしい顔をしてる割にゃあ解ってて、我儘をさしてくれらあね。」
「成程ね、華族様の内をすっかり預って、何のこたあない乞食からお前さんを拾上げたほどの人だから、そりゃお前さんを扱うこたあ、よく知っているんだろう。