Japanische Klassiker mit Furigana
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はなのひょうげん
鼻の表現
夢野 久作
Lesen Sie 鼻の表現 (はなのひょうげん) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 71.303 Zeichen · 141 Bildschirme
鼻の表現はこうして常にその誠意の有無を裏書して、相手の警戒心を挑発します。「嘘から出たまこと」でも「真事から出たウソ」でもそのままソックリ写し出して、鼻の表現の邪道の研究範囲を狭くして行きます。三千年前から聖人が心配していた世道人心が、今日迄も案外廃れ切らないのは、偏にこの鼻の表現の御蔭ではありますまいかと考えられる位であります。
親の罪を引き受けて「私が致しました」というしおらしい孝子の鼻の表現と、自分の罪を他人になすり付けて「一向に存じませぬ」と白を切る悪党の済まし切った鼻の表現は、どうしても違わなければなりませぬ。同時にあらゆる証拠が揃っていながら「冤罪だな」と名奉行が心付き、又はなんの証拠もなくて反証ばかりあがっていながらテッキリ此奴と名判官が睨むのは、その無私公明、青空止水の如き心鏡に、被告人の鼻の表現がありありと映ったものに違いありませぬ。
かようにして鼻の表現は、人間に記憶力なるものが存在する限り法律上の罪悪をも映し出すので、こうなると現代の証拠裁判なぞいうものは甚だ不確なものとなります。指紋などの研究よりも何よりも、先ず鼻の表現の研究の方が刻下の急務ではあるまいかと考えられる位であります。