Japanische Klassiker mit Furigana
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はなのひょうげん
鼻の表現
夢野 久作
Lesen Sie 鼻の表現 (はなのひょうげん) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 71.303 Zeichen · 141 Bildschirme
眼だけが細く波打って笑いを見せ、口だけがへの字になって怒りを見せるのとは同日の論でないのであります。
しかし同時に鼻が些しでも鼻以外の表現能力の補助を受けると、直ちに驚くべき表現力を発揮し得る事は、事実が証明しているのであります。さながら竜の水を得たるが如く、又は虎の山に凭れるが如く無辺際に亘って活躍して、鼻以外の表現能力が発揮し得ない範囲にまでも遠く深く及ぶものであります。
ここに於て鼻の表現能力は如何なる哲学、如何なる宗教、如何なる芸術も解決し得ない不可思議その者となって来るのであります。
永久に解決出来ない神秘で、しかも眼前にある明白な事実となって来るのであります。
所詮、鼻は表現界中央の重鎮……表現界のドミナントであります。
偉い人はたった一人でいる時は、宿賃の工面は愚か車の後押も出来ません。しかるにこれにいったん有意有能な同志や乾児がくっつくと、無限不動の裡にその同志や乾児の総ての能力以上の価値を示す事が出来るのであります。又鼻は、顔面表現の舞台面に於ける千両役者とも見る事が出来るのであります。
……御注進御注進、一大事一大事……ナ、何事じゃ……と慌てふためく動的はした役者よりも、舞台の真中に神色自若としている千両役者の方が、はるかに深い感動を見物に与えるようなものであります。