Japanische Klassiker mit Furigana
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ああぎょくはいにはなうけて
ああ玉杯に花うけて
佐藤 紅緑
Lesen Sie ああ玉杯に花うけて (ああぎょくはいにはなうけて) von 佐藤 紅緑 (さとうこうろく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 126.617 Zeichen · 250 Bildschirme
父の足元は巌が予想したほどみだれてはいなかった、かれは町の暗い方の側を急ぎ足で歩いた。
「どこへゆくんだろう」
巌はこう思いながら父と二十歩ばかりの間隔を取ってさとられぬように軒下に沿うていった。父はそれとも知らずにまっすぐに本通りへ出て左へ曲がった。
「役場へゆくんだ」
この深夜に役場へゆくのはなんのためだろう、巌の頭に一朶の疑雲がただようた。とかれはさらにおどろくべきものを見た、父は役場の入り口から入らずにしばらく窓の下にたたずんでいたがやがて軽々と窓わくによじのぼった、手をガラス窓にかけたかと思うと、ガラスがかすかに反射の光と共に動いた。父の姿はもう見えない。
「どうしたことだろう」
巌はあっけに取られたがすぐこう思いかえした。
「なにかわすれものをしたのだろう」
だがこのときかれはぱっと一閃の火光が窓のガラスに映ったような気がした、そうしてそれがすぐ消えた。
「なぜ電灯をつけないんだろう」
ふたたび火光がぱっとひらめいた。ゆがんだような反射がガラスをきらきらさせた、それはろうそくの光でもなければガスの光でもない、穂末の煙が黒みと白みと混合して牛乳色に天井に立ちのぼった。