Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

あのかお

あの顔

林 不忘

Lesen Sie あの顔 (あのかお) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.813 Zeichen · 30 Bildschirme

Aozora Bunko

絵の顔が、かすかに笑いを拡げるにつれて、お久美も、知らずしらず、ほほえまずにはいられなかった。客のこみあう、狭い絵草紙星の店で、かの女は、岩井半三郎と二人きりで対しているのだった。

お久美は、にっこりした。店員のひとりが、そばへ来ていた。

「いらっしゃいまし。豊春の岩井半三郎の死に絵でございます。だいぶ古いもので、七十年ぐらいのものでございましょうか。」

「兼、出ましょう。」

逃げるように、伏見屋の店を出た。

死絵というのは、死んだ俳優の似顔絵のことだった。うすい藍摺りが特色で、この豊春筆岩井半三郎のそれは、白無垢を着て悄然と立っているすがただった。背景に、三途の川の杭が見えて、さびしいけしきだった。伏見屋の者のいうとおり、絵の主の岩井半三郎も、画家の勝川豊春も、七十年ほど前に死んでいるのだった。

七十年まえの役者の顔だった。それがどうしてこの、縁もゆかりもない自分を、こんなにまで呵むのだろうか。冷静にかえったお久美は、不思議なのを通りこして、途方もなく愚かしいことに感ずるだけだった。こどものころにどこかであの絵を見たことがあって、その時の恐ろしい印象が、記憶の下積みになって意識の底に潜在しているのだろうか。