Japanische Klassiker mit Furigana
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いのちのしょや
いのちの初夜
北条 民雄
Lesen Sie いのちの初夜 (いのちのしょや) von 北条 民雄 (ほうじょうたみお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 31.366 Zeichen · 63 Bildschirme
今さらのようにあたりを眺めて見た。膿汁に煙った空間があり、ずらりと並んだベッドがある。死にかかった重症者がその上に横たわって、他は繃帯でありガーゼであり、義足であり松葉杖であった。山積するそれらの中に今自分は腰かけている。――じっとそれらを眺めているうちに、尾田は、ぬるぬると全身にまつわりついて来る生命を感じるのであった。逃れようとしても逃れられない、それは、鳥黐のようなねばり強さであった。
便所から帰って来た佐柄木は、男を以前のように寝かせてやり、
「ほかに何か用はないか」
と訊きながら布団をかけてやった。もう用はないと男が答えると、佐柄木はまた尾田の寝台に来て、
「ね、尾田さん。新しい出発をしましょう。それには、まず癩に成りきることが必要だと思います」
と言うのであった。便所へ連れて行ってやった男のことなど、もうすっかり忘れているらしく、それが強く尾田の心を打った。佐柄木の心には癩も病院も患者もないのであろう。この崩れかかった男の内部は、我々と全然異なった組織ででき上がっているのであろうか、尾田には少しずつ佐柄木の姿が大きく見え始めるのだった。
「死にきれない、という事実の前に、僕もだんだん屈伏して行きそうです」