Japanische Klassiker mit Furigana
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いのちのしょや
いのちの初夜
北条 民雄
Lesen Sie いのちの初夜 (いのちのしょや) von 北条 民雄 (ほうじょうたみお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 31.366 Zeichen · 63 Bildschirme
のありがたさを、お前は知ったのではなかったか、お前は知っているはずだ、死ねば生きてはいないということを! このことを心底から理解しているはずだ。死ねばもはや人間ではないのだ、この意味がお前には判らんのか。人間とは、すなわち生きているということなのだ、お前は人間に対して愛情を感じているではないか。自分自身が人間であるということ、このことをお前は何よりも尊敬し、愛し、喜びとすることができるではないか――夜になって、床にはいるたびに私はこういうことを自問自答するのであった。
私は心臓が弱いのでちょっと昂奮するとすぐ脈搏が速くなりそれが頭に上って眠れない。こういう自問自答をしている時は定まってどきどきと動悸(どうき)がうつ。睡眠不足は悪影響を及ぼして、翌日になると余計充血が激しかったりするのだった。
私は一日に三回、二十分ないし三十分くらいずつの長さで眼を罨法した。医局から貰って来た硼酸水を小さな罨法鍋に移し、火をかけてぬるま湯にすると、それをガーゼに浸して眼球の上に載(の)せて置くのである。仰向(あおむ)けに寝転んで、私はじっとしている。ほのかな温(ぬく)もりが瞼の上からしみ入って来て、溜まった悪血が徐々に流れ去って行くような心地良さである。