Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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いのちのしょや

いのちの初夜

北条 民雄

Lesen Sie いのちの初夜 (いのちのしょや) von 北条 民雄 (ほうじょうたみお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 31.366 Zeichen · 63 Bildschirme

Aozora Bunko

初めに馬鹿にした友人たちも、あまり充血の散るのが遅いので、心配して見舞いに来るようになった。眼科の治療日にはかかさず出かけて洗眼し、薬をさしてもらった。

ところが、そうしたある日、私は久しぶりで十号病室の附添夫をやっているTのところへ遊びに行き、意外なところで良くなる方法を発見した。発見といっても、私だけのことで、知っている人はすでにみなやっているのであるが、私はうれしかったのでまるで自分が発見したことのように思った。それは吸入器を眼にかけて洗眼と罨法を同時に行なうのである。

Tは私よりずっと眼は悪く、片方はほとんど見えないし、良く見えるという方も、もう黒いぶつぶつが飛び廻って見え、盲目になるのも決して遠いことではないと自覚し、覚悟しているほどである。だから眼のことになると私なんかより十倍もくわしい。だからこの男の前では私は、羞ずかしくて自分の眼のことなどいわれた義理でないのであるが、しかし、私の最も親しい友人であるし、彼もまた私を心配して、

「俺、毎日、夕方吸入かけてるんだが、君もかけてみないか」とすすめてくれた。

タンクの水がくらくらと煮立ち、やがてしゅっと噴き出した霧の前に坐ると、私はひどく気味が悪くなって来た。