Japanische Klassiker mit Furigana
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うすゆきしょう
うすゆき抄
久生 十蘭
Lesen Sie うすゆき抄 (うすゆきしょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 30.454 Zeichen · 59 Bildschirme
竜興の娘の妙子というのは、これもまた癩病の筋で、一時は南蛮寺の救癩院にひそんでいたが、そこにも居着かれず、香具と名を変えて伊豆の近くに住んでいたとも聞いている。もともとこのあたりは武蔵の斎藤の出生地で、何代かの間、斎藤実好の子孫が伊豆守を名乗っていた縁故の地なのである。それで道益がたずねてみた。「そのなかに、面甲をつけたのが、いくたりかいたはずだが」
すると二人が、そういえばそれらしいのが七、八人いたようだとこたえた。
南蛮頬といっている葡萄牙渡来の鉄の面甲には、悪魔、鬼、獅子、狼、鷲など、いろいろの型があり、矢弾の掠傷から面部を保護するための武具だが、いつもその目的のためばかりに使われるとはかぎらない。越前の戦争のころには、竜興はもう身体の自由がきかなくなり、輿に乗って采配を振っていたが、顔の頽廃を頭巾で包みかね、昼も夜も獅子の面甲をあてていたということである。夜闇の庭先の忍逢いに、なんのための面甲かと理解に苦しんでいたが、癩者の族というなら話は至極疏通する。
これは徹頭徹尾誤解なので、とんだ見当違いというところだったが、道益はこの考えにはまりこんでたやすく抜け出せなくなっていた。