Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おさん

おさん

山本 周五郎

Lesen Sie おさん von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.128 Zeichen · 66 Bildschirme

Aozora Bunko

二の八

二の八

小網町の河岸にあるその船宿「船正」を出たのは、明くる日の九時ころであった。参太の知っていた女主人はおととし死んだそうで、おとよという娘が婿をとり、まえより繁昌しているようすだった。

「大茂を継ぐ人はいないんですか」朝めしのあと、裂けた半纒を繕いながらおとよがそう云った、「ひいきにしていただいたみなさん、どなたもおみえにならないんですよ、どうぞ参ちゃんだけはまたいらしってね」そこで慌てて口へ片手を当て、肩をすくめながら羞み笑いをした、「ごめんなさい、いい親方になったのに参ちゃんだなんて、つい小さいときの癖が出ちゃったんですよ」

「参ちゃんか、なつかしいな」と参太は微笑した、「長いことそう呼ばれたことはなかった、それを聞いて初めて、江戸へ帰ったという気持になったよ」

「まさか怒ったんじゃないでしょうね」

「参ちゃんか」と彼はまた云った、「おちついたらやって来るよ、親方なんてえ柄じゃあねえ、これからもずっとそう呼んでもらいたいな」

山谷へゆくと云ったら、おとよは舟にしろとすすめた。しかし参太はそれを断わって「船正」の店を出た。時刻が九時過ぎなので、道にはあまり人どおりがなかった。