Japanische Klassiker mit Furigana
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おさん
おさん
山本 周五郎
Lesen Sie おさん von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.128 Zeichen · 66 Bildschirme
参太は両国橋のほうへ歩いてゆきながら、ときどきうしろへ振返った。伊三が出て来るかと思ったのであるが、伊三もあらわれないし、作次の姿も見えず、浜町の手前で戻り駕籠をひろい、そのまま山谷へ向った。
棗店は山谷町ではなく、ずっとはずれの、山谷浅草町にある長屋だった。そこから先は家がなく、茶色に実った稲田のあいだを、乾いた道が千住のほうまで続いてい、仕置場や、火葬寺の林などが眺められた。長屋は八棟あり、岩吉のいた家はすぐにわかったが、そこにはべつの者が住んでいた。その女房はなにも知らず、差配を教えてくれたので通りへ戻り、小さな荒物屋をやっている太助の店を訪ねた。――差配の太助も留守で、五十六七になる女房が袋貼りをしていた。岩吉のことを訊くと、女房はぎょっとしたようすで、袋貼りの手を休め、疑わしげに参太の顔を見まもった。
「あなたはどなたです」と女房は咎めるように訊き返した、「親類の方ですか」
「まあそんなところだが、――おさんというかみさんがいたでしょう」
「いましたよ、いいおかみさんでした、岩吉なんていう男にはもったいないくらいいいおかみさんでしたよ」
「二人で引越したんですか」