Japanische Klassiker mit Furigana
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おさん
おさん
Lesen Sie おさん von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.343 Zeichen · 21 Bildschirme
「こりゃ、どうも、お父さんは泣き上戸らしいぞ。」
と言い、顔をそむけて立ち、お勝手へ行って水で顔を洗いながら、
「どうも、いかん。酔いすぎた。フランス革命で泣いちゃった。すこし寝るよ。」
とおっしゃって、六畳間へ行き、それっきりひっそりとなってしまいましたが、身をもんで忍び泣いているに違いございません。
夫は、革命のために泣いたのではありません。いいえ、でも、フランスに於ける革命は、家庭に於ける恋と、よく似ているのかも知れません。かなしくて美しいものの為に、フランスのロマンチックな王朝をも、また平和な家庭をも、破壊しなければならないつらさ、その夫のつらさは、よくわかるけれども、しかし、私だって夫に恋をしているのだ、あの、昔の紙治のおさんではないけれども、
女房のふところには
鬼が棲むか
あああ
蛇が棲むか
とかいうような悲歎には、革命思想も破壊思想も、なんの縁もゆかりも無いような顔で素通りして、そうして女房ひとりは取り残され、いつまでも同じ場所で同じ姿でわびしい溜息ばかりついていて、いったい、これはどうなる事なのでしょうか、運を天にゆだね、ただ夫の恋の風の向きの変るのを祈って、忍従していなければならぬ事なのでしょうか。