Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おせん

おせん

邦枝 完二

Lesen Sie おせん von 邦枝 完二 (くにえだかんじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 74.074 Zeichen · 148 Bildschirme

Aozora Bunko

「はいお早う」

「ああ喉がかわいた」

赤い鳥居の手前にある。伊豆石の御手洗で洗った手を、拭くのを忘れた橘屋の若旦那徳太郎が、お稲荷様への参詣は二の次ぎに、連れの隠居の台詞通り、土へつかない足を浮かせて、飛び込んで来たおせんの見世先。どかりと腰をおろした縁台に、小腰をかがめて近寄ったのは、肝腎のおせんではなくて、雇女のおきぬだった。

「いらっしゃいまし。お早くからようこそ御参詣で。――」

「茶をひとつもらいましょう」

「はい、唯今」

三四人の先客への遠慮からであろう。おきぬが茶を汲みに行ってしまうと、徳太郎はじくりと固唾を呑んで声をひそめた。

「おかしいの。居りやせんぜ」

「そんなこたァごわすまい。看板のねえ見世はあるまいからの」

「だが御隠居。おせんは影もかたちも見えやせんよ」

「あわてずに待ったり。じきに奥から出て来ようッて寸法だろう」

「朝飯とお踏みなすったか」

「そうだ。それともお前さんのくるのを知って、念入りの化粧ッてところか」

「嬉しがらせは殺生でげす。――おっと姐さん。おせんちゃんはどうしやした」

「唯今ちょいとお詣りに。――」

「どこへの」

「お稲荷様でござんすよ」