Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おせん

おせん

邦枝 完二

Lesen Sie おせん von 邦枝 完二 (くにえだかんじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 74.074 Zeichen · 148 Bildschirme

Aozora Bunko

「おせん」

「あい」

「お前、何か訳があってだの」

「いいえ、何も訳はござんせぬ」

「隠すにゃ当らないから、有様にいって見な、事と次第に因ったら、堺屋は、このままお前には会せずに、帰ってもらうことにする」

「そんなら、あたしの願いを聞いておくんなさいますか」

「聞きもする。かなえもする。だが、その訳は聞かしてもらうぜ」

「さァその訳は。――」

「まだ隠しだてをするつもりか。あくまで聞かせたくないというなら、聞かずに済ませもしようけれど、そのかわりおいらはもうこの先、金輪際、お前の絵は描かないからそのつもりでいるがいい」

「まァお師匠さん」

「なァにいいやな。笠森のおせんは、江戸一番の縹緻佳しだ。おいらが拙い絵なんぞに描かないでも、客は御府内の隅々から、蟻のように寄ってくるわな。――いいたくなけりゃ、聞かずにいようよ」

いたずらに、もてあそんでいた三味線の、いとがぽつんと切れたように、おせんは身内に積る寂しさを覚えて、思わず瞼が熱くなった。

「お師匠さん、堪忍しておくんなさい。あたしゃ、お母さんにもいうまいと、固く心にきめていたのでござんすが、もう何事も申しましょう。どっと笑っておくんなさいまし」