Japanische Klassiker mit Furigana
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おせん
おせん
邦枝 完二
Lesen Sie おせん von 邦枝 完二 (くにえだかんじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 74.074 Zeichen · 148 Bildschirme
「おお、ではやっぱり何かの訳があって。……」
「あい、あたしゃあの、浜村屋の太夫さんが、死ぬほど好きなんでござんす」
「えッ。菊之丞に。――」
「あい。おはずかしゅうござんすが。……」
消えも入りたいおせんの風情は、庭に咲く秋海棠が、なまめき落ちる姿をそのまま悩ましさに、面を袂におおい隠した。
じッと、釘づけにされたように、春信の眼は、おせんの襟脚から動かなかった。が、やがて静かにうなずいたその顔には、晴れやかな色が漂っていた。
「おせん」
「あい」
「よくほれた」
「えッ」
「当代一の若女形、瀬川菊之丞なら、江戸一番のお前の相手にゃ、少しの不足もあるまいからの。――判った。相手がやっぱり役者とあれば、堺屋に会うのは気が差そう。こりゃァ何んとでもいって断るから、安心するがいい」
八
勢い込んで駕籠で乗り着けた中村松江は、きのうと同じように、藤吉に案内されたが、直ぐ様通してもらえるはずの画室へは、何やら訳があって入ることが出来ぬところから、ぽつねんと、池の近くにたたずんだまま、人影に寄って来る鯉の動きをじっと見詰めていた。
師の歌右衛門を慕って江戸へ下ってから、まだ足かけ三年を経たばかりの松江が、贔屓筋といっても、江戸役者ほどの数がある訳もなく、まして当地には、当代随一の若女形といわれる、二代目瀬川菊之丞が全盛を極め