Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おりつとこらと

お律と子等と

芥川 竜之介

Lesen Sie お律と子等と (おりつとこらと) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 25.195 Zeichen · 51 Bildschirme

Aozora Bunko

「慎太郎が来たよ。」

戸沢の側に坐っていた父は声高に母へそう云ってから、彼にちょいと目くばせをした。

彼は父とは反対に、戸沢の向う側へ腰を下した。そこには洋一が腕組みをしたまま、ぼんやり母の顔を見守っていた。

「手を握っておやり。」

慎太郎は父の云いつけ通り、両手の掌に母の手を抑えた。母の手は冷たい脂汗に、気味悪くじっとり沾っていた。

母は彼の顔を見ると、頷くような眼を見せたが、すぐにその眼を戸沢へやって、

「先生。もういけないんでしょう。手がしびれて来たようですから。」と云った。

「いや、そんな事はありません。もう二三日の辛棒です。」

戸沢は手を洗っていた。

「じきに楽になりますよ。――おお、いろいろな物が並んでいますな。」

母の枕もとの盆の上には、大神宮や氏神の御札が、柴又の帝釈の御影なぞと一しょに、並べ切れないほど並べてある。――母は上眼にその盆を見ながら、喘ぐように切れ切れな返事をした。

「昨夜、あんまり、苦しかったものですから、――それでも今朝は、お肚の痛みだけは、ずっと楽になりました。――」

父は小声に看護婦へ云った。

「少し舌がつれるようですね。