Japanische Klassiker mit Furigana
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おじぎ
お時儀
Lesen Sie お時儀 (おじぎ) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.067 Zeichen · 9 Bildschirme
彼は宿命を迎えるように、まっ直に歩みをつづけて行った。二人は見る見る接近した。十歩、五歩、三歩、――お嬢さんは今目の前に立った。保吉は頭を擡げたまま、まともにお嬢さんの顔を眺めた。お嬢さんもじっと彼の顔へ落着いた目を注いでいる。二人は顔を見合せたなり、何ごともなしに行き違おうとした。
ちょうどその刹那だった。彼は突然お嬢さんの目に何か動揺に似たものを感じた。同時にまたほとんど体中にお時儀をしたい衝動を感じた。けれどもそれは懸け値なしに、一瞬の間の出来事だった。お嬢さんははっとした彼を後ろにしずしずともう通り過ぎた。日の光りを透かした雲のように、あるいは花をつけた猫柳のように。………
二十分ばかりたった後、保吉は汽車に揺られながら、グラスゴオのパイプを啣えていた。お嬢さんは何も眉毛ばかり美しかった訣ではない。目もまた涼しい黒瞳勝ちだった。心もち上を向いた鼻も、……しかしこんなことを考えるのはやはり恋愛と云うのであろうか?――彼はその問にどう答えたか、これもまた記憶には残っていない。ただ保吉の覚えているのは、いつか彼を襲い出した、薄明るい憂鬱ばかりである。