Japanische Klassiker mit Furigana
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おかあさんのかんざし
お母さんのかんざし
小川 未明
Lesen Sie お母さんのかんざし (おかあさんのかんざし) von 小川 未明 (おがわみめい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N3. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N3 · Mittel · moderne Kanji und Kana · 2.577 Zeichen · 6 Bildschirme
少年は、その男といっしょに走りました。
「大事なお母さんのかんざしをとりもどさねばならない……。」と、叫んで、先刻の行商人の後を追いかけました。
かんざしを取りかえた奴は、それと察したものか、とっとっと道を急いで、その姿は、野原のはてにかすんで、小さく見えました。二人は、けんめいになって走ったのです。
「おうい、おうい。」
この時分から、空は、曇ってきました。そして、雷が鳴りはじめました。少年は、だんだん疲れて、男におくれました。野原を越して、海岸に出たときには、海の上は、墨を流したように暗くなって、電光は流れ、雷はすぐ近くで鳴り、たきのような太い雨が降ってきました。このものすさまじい景色の中で、二人の男は、たがいに欲のために、死にものぐるいになって、組み打ちをしていました。少年は、いまにも、雷が、頭の上に落ちそうなので、浜辺に、引き上げてあった、船の下に腹ばいになって、二人のけんかを見ている中に、二人は、岩の鼻先から、抱き合ったまま、うず巻く波の中に落ちたかと思うと、そのまま海は、二人をのんでしまいました。
しばらくすると、空は、けろりと晴れて、海の色は青く、それは、お母さんのかんざしの珠よりも青く、あちらの夕焼けは、また、さんごよりも紅かったのでした。