Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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けむりをはかぬえんとつ

けむりを吐かぬ煙突

夢野 久作

Lesen Sie けむりを吐かぬ煙突 (けむりをはかぬえんとつ) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.836 Zeichen · 28 Bildschirme

Aozora Bunko

……お女郎蜘蛛だ……あの南堂家の木立の中に居った奴がクッ付いたままここまで来たのだ。私が電燈の下で掃除をする時に、持って生まれた習性で暗い方へ暗い方へと逃げまわって、巧みに私の眼を脱れながらコンナ処に落ち付いていたのであろう。……南堂未亡人の執念……?……。

私はフッと可笑しくなった。少々センチになったかな……と思いながらソッと窓を開けた。帽子を打振って逃がしてやった。あとに糸が残っていないのを見定めてから頭の上に載せた。

何がなしにホッとした。

南堂伯爵未亡人の死と、私とを結び付けて考え得る者は、今逃がしてやった一匹のお女郎蜘蛛以外に絶無である。心臓に短剣を刺された屍体が、私の名前を叫び立てでもしない限り……。

私はこの原稿を書上げ次第、雑誌社に居る友人に郵送するつもりである。同時に新聞社へ宛てて神経衰弱がヒドクなったようだから一箇月ばかり静養して来る……という意味の届けを出して、警視庁の手の届かない遠い処へ飛ぶつもりでいるのだから万に一つも捕まる心配はない。

しかし用心だけは、どこまでもしておくのが私の癖だ。

この原稿を受取った私の友人は、いつもの通り内容をロクに見ないまま文選工場へまわすに違いない。